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2023.01.20

聞こえと認知症の深い関係

「人生100年時代」・・半世紀前には考えられなかったような言葉が使われている現在、公衆衛生をはじめ医学の進歩の恩恵で人類は平均寿命を大きく伸ばしてきました。高齢期の健康状態を維持しようという概念のもと、WHO2000年に提唱した「健康寿命」という言葉も今やすっかり定着しております。この「健康寿命」とは平均寿命から認知症など継続する介護状態の期間を引いたもので、最近のデータで、平均寿命が男性約81歳女性約88歳(2021年)に対して、「健康寿命」は男性約73歳女性約75歳(2019年)となっております。

できれば認知症など介護が必要な状態にならないよう努めたいところですが、それでも寿命が伸びるに伴い認知症患者の数も増えてきており、国内において2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予測されております。こうみると加齢による認知症のリスクは避けて通れずと言ったところです。とはいえ出来るだけリスクを回避できるようにするのが医学の務めであり、有力医学誌においても近年「認知症のリスク因子」が報告されております。その報告からは、現時点で分かりうる危険因子が時期別(若年期・中年期・高年期)に考察されており、危険因子が高い順に「中年期の難聴」・「若年期の低教育」・「高年期の喫煙」・「高年期の社会的孤立」ならびに「高年期のうつ」となっております。この報告からは、関連性は一見薄いように思いますが、最大の危険因子は難聴ということになり、そのほかの報告からも同様に、難聴を放置することは認知機能の低下につながることや、その裏返しで、適切な難聴の治療が認知症の予防につながる可能性が言われております。さらに難聴になると他者とのコミュニケーションが取りづらくなり、認知症の危険因子である「社会的孤立」を引き起こし、それがまた「うつ」につながりさらに認知症になるリスクを上げると考えられております。

年齢による難聴(加齢性難聴)は遺伝的要素があり個人差はあるものの、聞こえを司る細胞は生まれた時から歳を重ねるごとにその数は低下の一途をたどるため、何らかの難聴は早ければ50代から始まり70代では約半数の人に現れると言われています。年齢には抗えないとはいえ、環境因子が難聴悪化に関係している事は古くから言われており、半世紀以上前のレポートですが、アフリカの無音静寂下に暮らす部族の聴力を調べた結果、年齢を重ねても難聴はほとんど進行していないとする報告があります。彼らの血圧もまた高齢に至っても上がらなかったようで、このことから、騒音や高血圧を放置することで起こる動脈硬化などが加齢性難聴の悪化に関連していると言われております。近年ではもう少しミクロのレベルで解析され、騒音による「酸化ストレス」や動脈硬化による「微小血流障害」が耳の奥にある聴覚を司る細胞を傷つけていくことで難聴が進行していくという説が有力です。

いかんせん、年齢による変化で一旦機能を失った聴覚細胞は元に戻らないのが現状です。その聴力を改善する方法は、より重度であれば人工内耳などの手術もありますが通常は集音器や補聴器ということになります。近年は集音器の質も向上しており、一般家電量販店で入手可能で試す価値は十分にありますが、より高度なものとなるとやはり補聴器となります。補聴器は個々に合わせて作成するためより高い技術を要しますので、補聴器作成は認定補聴器技能者のもとで作成することを推奨します。当院でも専用の補聴器外来を設けており、認定補聴器技能者のもとでの補聴器作成とアフターケアを行なっております。また認定補聴器技能者のいる補聴器販売施設への紹介もしておりますで、補聴器を作りたいと思われる方は一度ご相談ください。

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