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2022.05.25

耳の不調と睡眠

コロナパンデミックの中、ライフスタイルも変化し屋内時間が増えるなどして生活のリズムが変わった方も多くおられると思います。生活リズムが変わり在宅ワークが増えるなどすると遅寝遅起きの習慣から睡眠のリズムも変化し、それによる体調不良などを訴える方も日常診療の中で少なくない印象です。

耳鼻科領域での体調不良の一つにめまい・ふらつきがあり、特に平衡機能障害と睡眠の不調の関係は近年注目を集めております。というのも耳鼻科受診しためまい患者さんの60%以上が何らかの睡眠障害を持っているとの報告もあり、睡眠が平衡機能の維持にいかに深く関与しているかが伺えます。事実、脳幹にある睡眠と覚醒を司っている部位には耳の平衡を司る三半規管からの神経信号が入っていることが分かっており、「平衡の不調」が「睡眠の不調」に繋がる可能性が指摘されています。具体的には、三半規管のめまい疾患の有名な一つ、メニエール病を患っている患者さんを睡眠検査したところ、正常の方と比べて深い睡眠(いわゆる熟睡)が欠落していることが分かっており、その可能性を裏付けるデータとなっております。逆に、「睡眠の不調」が「平衡の不調」をきたすこともあり、具体的には、睡眠障害の一種である睡眠時無呼吸症候群の診断を受けた患者さんが、慢性的な低酸素状態が続くことで中枢(脳)の不調や末梢(三半規管)の不調をきたし平衡機能の障害を伴うことも近年開発された精細なめまい検査の解析から判明してきております。

もう一つ、耳鼻科外来でよく遭遇する睡眠障害関連疾患に耳鳴りがあります。概ねの訴えは「耳鳴りのせいで眠れない・・」というものですが、耳鳴りはその原因が中耳炎など治療可能な病気によっては消失させることも可能ですが、多くは神経レベルの難聴など根本治療が困難な疾患が背景にありますので完全消失は困難です。それゆえに付き合っていく、鳴っているけど気にならなくしていくという考え方が大事なのですが、睡眠障害があるとそもそもその考え方に達することが困難となります。正解は、「耳鳴りのせいで眠れない」のではなく、「眠れないので耳鳴りが大きくなる」となりますので、まずは不眠治療に専念すると言うことになります。

睡眠障害の治療ですが、現在はその専門である日本睡眠学会から一定の治療基準も示されております。2013年の国際基準で睡眠障害の原因は大きく7つに分類(原発性不眠症・睡眠呼吸障害・概日リズム調節障害・むずむず足症候群・睡眠時随伴症・過眠症・睡眠衛生不良)されており、治療の第一は睡眠薬の使用ではなく、その原因をしっかり見据えた上での睡眠衛生指導といういわゆる生活指導的な治療となっています。投薬が必要な場合も第一選択は非ベンゾジアゼピン系という、従来日本で大量に使用されてきたベンゾジアゼピン系ではない投薬となります。この背景には、いまだ日本で多く処方されているベンゾジアゼピン系睡眠剤の依存性の問題や体内時計を狂わす懸念や認知症リスクを高める懸念があるものと考えられます。近年は、従来の睡眠剤とは異なる「自然な眠りを誘導する睡眠剤」も出てきており、治療薬の幅も増えてきておりますので、睡眠剤の適正かつより計画的な使用により睡眠障害が改善されることが示されております。

睡眠障害はその影響が全身に及びます。耳鼻科領域においても、特にめまい・耳鳴と睡眠障害が併存しているケースでは睡眠障害の鑑別は治療方針の要ですので、睡眠障害を専門とする医師との連携のもと適切な治療を行うことが症状改善に繋がると考えております。

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