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2020.05.13

ウィルス感染による嗅覚障害

世界的な感染の広がりを見せている新型コロナウィルス感染ですが、収束への糸口が見出せるように一刻も早い治療法の確立が待たれる現状です。治療法が確立していない状況では、できるだけ感染拡大を防止することが重要であり、当院でも可能な限り感染予防に取り組んで日々の診療を継続しております。

新型コロナウィルスの初期症状は一般的な風邪症状を呈しますが、中でも嗅覚障害(味覚障害)を呈することが多いことが報告されてきております。そういう背景もあり、嗅覚障害や味覚障害が生じた時は新型コロナウィルス感染の可能性も否定できないために、まずは7日間程度の自宅での隔離を行い、発熱・倦怠感・咳など追加の症状が出現しないかを観察していくことが感染拡大を抑える上で重要とされております。ただ、嗅覚障害の多くは副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎に加えて一般的な風邪のウィルス(ライノウィルスやインフルエンザウィルスなど200種類以上)によって引き起こされますので、嗅覚障害を生じたことが新型コロナウィルス感染をすぐに意味するわけではありません。とは言うものの、その可能性はありますので落ち着いて慎重に追加症状の有無をしっかり見ていかなければなりません。

嗅覚を司る嗅細胞が存在するのは嗅上皮という部位で、鼻の奥深いところ(眉間の奥)にあり、臭いの分子が空気の流れに乗って嗅細胞に届かないと嗅覚障害をきたします。多くの嗅覚障害はこの病態、すなわち鼻の粘膜が腫れて嗅細胞までに空気の流れが届かない状態(副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・風邪)で起こり、この状態を呼吸性嗅覚障害といいます。それとは別に、嗅細胞そのものがやられてしまって臭いの分子が嗅細胞に届いてもその奥の神経(嗅神経)に刺激が行かないという病態もあり、これを神経性嗅覚障害といいます。神経性嗅覚障害は主にウィルスが嗅細胞に直接感染することや、ウィルスに対する体の免疫応答によって嗅細胞が障害されることによって起こるといわれております。

神経性嗅覚障害として多いのは感冒罹患後嗅覚障害と言われるもので、いわゆるインフルエンザ等の風邪症状で鼻が詰まっているので臭いがしないと思っていると、風邪症状が落ち着いて鼻が通り出しても臭いがしない状態が続くというものです。ウィルスによる神経毒性により嗅神経が障害されてしまうのではないかと言われており、新型コロナウィルスによる嗅覚障害もこの神経性嗅覚障害の一つと考えられております。

嗅細胞は嗅神経末端にあり、嗅神経は脳神経の一種です。脳神経の末端は通常一旦傷つくと元に戻らない繊細でナイーブなものなのですが、その中にあって嗅神経末端である嗅細胞は再生を繰り返すと言う特異な能力を持っております。故に神経性嗅覚障害になったからといって治らないと言うわけではなく、その半数位以上の方は完治もしくは改善に至るとされております。ただ、改善に至るには一年以上かかるケースも珍しくなく、再生された神経細胞がその機能を取り戻すためにはある程度時間を要するということだと思います。

ただ残念ながら、中には治療効果なく臭いが戻らないこともあります。しかし、昨今の再生医療の現場においては、元来再生しうる嗅細胞をターゲットとした研究も多く、iPS細胞などの登場で更なる知見が深まっている領域ではあります。そう遠くない未来に嗅覚障害克服の日が来ることを願いつつ、ただ、まずは新型コロナウィルス感染の収束がそう遠くない日に来ることを切に思います。

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