耳が聞こえにくい

耳が聞こえにくい場合に考えられる疾患と治療法

音は、外耳・中耳・内耳、そして脳へと伝わり、知覚されます。その中のいずれかに障害をきたしたとき、聞こえにくくなります。
難聴の原因は多岐に渡りますので、診療ではその鑑別が重要になります。また、診断する医師の経験も大切です。さまざまな症状・検査結果から、原因となる疾患を絞り込んでいきます。聞こえにくくなった経緯、左右どちらか両方か、耳の痛み・耳閉感、耳鳴り、めまいなどの有無があれば、その程度にかかわらず、医師にお伝えください。

「歳のせいだろう」「気のせいだろう」と片づけない

“聞こえにくさ”をご自身で気づくのは、実は意外と難しく、また気づいたとしても「歳のせいだろう」と何となく放置してしまい、受診が遅れがちです。
「人に呼ばれたのに気づかなかった」「きき返すことが多い」「自分だけ会話についていけない」ということをご自身で気づいたり、ご家族に指摘されたときには、できるだけ早く当院にご相談ください。

徐々に耳が聞こえにくくなる場合

徐々に耳がきこえなくなっていく場合には、慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎、老人性難聴、耳硬化症などが疑われます。
突発的な難聴と比べ、「歳のせいだろう」「気のせいだろう」と考えてしまいがちです。老人性難聴であっても、補聴器の使用によって難聴の進行を緩やかにすることができますので、気づいたとき、指摘を受けたときには必ず受診するようにしましょう。

慢性中耳炎・真珠種性中耳炎

徐々に聴力が低下していく他、耳垂れ、めまいなどの症状が見られます。特に耳垂れを放置していると、耐性菌を生んで感染が広がり、肺炎を起こすこともあります。
慢性中耳炎のうちの1つ、真珠腫性中耳炎は、中耳周辺の骨を溶かし、髄膜炎などの命にかかわる病気に進展する可能性がある病気です。

慢性中耳炎・真珠種性中耳炎の治療法

耳の洗浄によって膿を排出させる方法がありますが、あくまで一時的な対策に留まり、根本的に治すためには手術が必要になります。
鼓膜穿孔閉鎖術、鼓膜形成術、鼓室形成術などの適応となります。当院ではいずれも、局所麻酔による日帰り手術が可能です。
命にかかわる病気に進展する可能性もありますので、できるだけ早い段階で手術を行うことをおすすめします。

老人性難聴

加齢とともに、内耳の感覚細胞は徐々にその数を減らしていきます。このことを主な原因として起こるのが老人性難聴(加齢性難聴)です。
まず高音域がきこえづらくなり、その後中音域、低音域も同様にきこえづらくなるのが特徴です。日常生活で気づくことは難しい一方で、定期的な聴力検査により早期に発見することができます。
難聴の他、高音の耳鳴りが両耳に起こることがあります。

老人性難聴の治療法

老人性難聴は、外耳から中耳までの、音を伝える流れの中で障害をきたしている「感音性難聴」に分類されるため、きこえを良くする補聴器の使用が第一に考えられます。
近年は補聴器も小型化、高性能化が進んでおり、ストレスなく使用できるものもご案内できますので、お気軽にご相談ください。当院院長は、補聴器適合判定医です。

耳硬化症

遺伝、麻疹の潜伏感染、女性ホルモンの乱れなどが原因と指摘されているのが、耳硬化症です。音の振動を内耳に伝えるアブミ骨が固着します。
難聴の他、耳鳴り、めまいなどの症状を伴い、妊娠を機に症状が悪化するケースも見られます。

耳硬化症の治療法

内視鏡によるアブミ骨手術が第一選択となります。アブミ骨の底の骨に小さな穴を開け、人工骨を設置します。
当院では、局所麻酔での日帰りでのアブミ骨手術を行っております。

突然耳が聞こえにくくなる場合

突然耳が聞こえにくくなる場合には、突発性難聴、メニエール病、低音障害型感音難聴、耳管狭窄症・耳管開放症などが疑われます。
特に突発性難聴は、発症後1週間以内に、できれば48時間以内に治療を開始することで、治療成績に向上が見られる病気です。まさに「1日でも早く受診していただきたい耳の病気」と言えます。

突発性難聴

耳の病気になったことがない、あるいはかつて病気になったけれどすっかり完治している人が、あるときに急に片方の耳がきこえなくなるのが「突発性難聴」です。
はっきりとした原因は分かっていません。ウイルス感染、内耳循環障害、免疫異常、ストレスなどの要因が複雑に絡み合って発症するのではないか、と言われています。
なお、ごく稀ではありますが、両耳に同時に突発的な難聴が起こることもあります。
原因の特定が難しい一方で、治療は可能です。治療開始が早期であるほど治療成績も良い傾向がありますので、すぐにご相談ください。

突発性難聴の治療法

ステロイドによる治療が有効です。近年の研究から、その効果の仕組みも解明されてきており、より信頼性の高い治療と言えます。
現在の医療、また当院においても、ステロイドを使用する際には「ゴールを決めて短期間に」ということに重点を置いています。副作用のリスクを最大限排除しながら、治療の効果を維持します。当院で突発性難聴に対するステロイド治療を行う際には、1週間程度の短期間での使用となります。
ただし、重度の糖尿病の方は入院した上で血糖コントロールをする必要がありますので、提携する医療機関をご紹介いたします。
なお、どうしても全身ステロイド治療(内服・点滴)に抵抗があるという方は、ステロイドの鼓室内注入という方法もあります。影響の範囲を最小限にしながらも、全身ステロイド治療と同等の効果が認められます。

メニエール病

難聴の他、回転性めまい、片側だけの耳鳴りなどを伴い、それらの症状が同時に、また繰り返し起こる病気です。また、吐き気・嘔吐といった症状もよく見られます。
内耳にリンパ液が溜まることが原因と言われています。また、ストレス、慢性疲労、睡眠不足なども発症に関わっているとの指摘があります。

メニエール病の治療法

リンパ液の滞留を防ぐための利尿剤、めまいを抑えるための抗めまい薬、難聴に対するステロイドなどを使った治療が主となります。
また、ストレスも発症や悪化との関わりが強いとされているため、診察ではその原因を一緒に考え、できる限り回避するようアドバイスも致します。ストレスが原因の1つとなっていることが疑われる場合には、処方するお薬の内容も異なります。
しっかりと休むこと、睡眠の質を改善することも重要です。

低音障害型感音難聴

「低音障害型感音難聴」は、低音だけに対して起こる感音難聴です。メニエール病と同じように20~40代の女性に多く発症し、“めまいのないメニエール病”、“蝸牛型メニエール病”と表現されることもあります。
蝸牛に内リンパ液が滞留することで起こると言われていますが、はっきりとした原因はまだ分かっていません。
難聴の他、耳の詰まった感じ、低音の耳鳴りなどの症状を伴いますが、いずれも程度は軽く、検査で見つかるケースが多くなっています。

低音障害型感音難聴の治療法

根本的な原因は解明されていないももの、内耳の障害を伴うことは分かっていますので、ステロイド、ビタミンB12などの飲み薬を処方して治療します。
重度になると、入院した上での加療が必要になることもあります。

耳管狭窄症・耳管開放症

「耳管狭窄症」は、風邪をきっかけとした急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、滲出性中耳炎、副鼻腔炎、上咽頭炎などを原因として、耳管(耳と鼻の奥をつなぐ管)が詰まってしまう病気です。急な難聴の他、耳の詰まった感じ、呼吸音が響く、耳鳴りなどの症状を伴います。
成人の方が耳管狭窄症になった場合、鼻の奥に腫瘍ができていることもありますので、ティンパノグラム検査に加え、内視鏡検査を用いた慎重な診断が求められます。

「耳管開放症」は、耳管狭窄症とは逆に、耳管が開きっぱなし(必要なときに閉じられない)病気です。体重減少(ダイエット含む)による耳管周囲の組織の痩せ、顎関節症、妊娠、ストレス、末梢循環障害などが原因と言われており、比較的女性に多く発症します。
急な難聴の他、耳の詰まった感じ、自分の声が響く、呼吸音が響く、といった症状が見られます。またこれらの症状が、うつむいたとき、しゃがんだときに緩和されることも特徴的です。反対に、運動をしたとき、汗をかいたときには症状が悪化する傾向にあるようです。

耳管狭窄症・耳管開放症の治療法

耳管狭窄症に対しては、鼻汁の吸引、薬物療法を行います。アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などを原因としている場合にはその治療も必要です。オトブェント(風船状の器具)による耳抜きのトレーニングも有効です。

耳管開放症に対しては、漢方薬による治療が有効です。無理なダイエットをしている場合には、中止あるいはダイエット方法の再考が必要です。顎関節症が疑われる場合には、ご紹介した歯科医院での診断の後、連携して治療を行います。

お子さんの耳が聞こえにくい場合

お子様の耳がきこえにくい場合、もっとも多く見られるのが急性中耳炎です。また急性中耳炎に限らず、特に小さなお子様は言葉でうまく症状を伝えることができませんので、保護者様の気づきが重要になります。

急性中耳炎

風邪などによる喉の炎症を原因として、耳管を通して中耳にウイルス・細菌が入り込み、感染・炎症を起こすのが「急性中耳炎」です。
耳のきこえの悪化の他、強い耳の痛み、耳垂れ、発熱などの症状を伴います。
小さなお子様の場合には、「耳を触って気にしている」「不機嫌な様子が続いている」「食欲がない」といった様子が見られたら一度ご相談ください。赤ちゃんの急性中耳炎=泣き叫ぶというイメージがありますが、必ずしもそうとは限りません。

急性中耳炎の治療法

保存治療では、ガイドラインに沿った適切な量・期間で抗生剤を使用します。
手術治療では鼓膜切開術が第一選択となりますが、その後も急性中耳炎が繰り返される場合には、鼓膜チューブ挿入術を行います。
手術によって開いた穴は、ほとんどの場合、自然に塞がります。当院では、鼓膜を切開する際には、その穴の周りの硬い組織を取り除くなどして、鼓膜が再生しやすい環境を作ります。

滲出性中耳炎

中耳に滲出液が滞留することで炎症を起こすのが「滲出性中耳炎」です。
お子様の場合、アデノイド肥大や鼻すすりの癖が原因となるケースがよく見られます。大人でも同様の原因により発症することがありますが、割合としてはごく稀です。上咽頭がんの可能性を疑う必要があります。
難聴の他、耳の詰まったような感じがすることがあります。いずれも、慣れれば気にならない程度の症状ですので、おかしいな、と思ったときには速やかにご相談ください。

滲出性中耳炎の治療法

お子様の場合は、オトヴェントと呼ばれる通気治療が有効です。苦しさなどはなく、鼻でバルーンを膨らませることで耳管を開いて陰圧を改善しますので、楽しんで治療を受けていただけます。オトヴェントでの治療で十分な効果が見られない場合には、鼓膜切開術、鼓膜チューブ挿入術などの手術を行います。
大人の場合も通気治療が有効ですが、頻繁に通院する必要がありますので、鼓膜切開術を視野に入れます。鼓膜切開術の後は、ご自宅で簡単な耳抜きのトレーニング(バルサルバ法)を行うことで、ほとんどのケースで改善が見られます。それでも症状の改善が見られない場合には、鼓膜チューブ挿入術を行います。

耳垢がつまっている場合

耳垢は、外耳道の分泌物が、古い表皮や埃などと混じってできます。その後、自然に剥がれて外に出ていくため、通常はそれほど頻繁に耳掃除をする必要はありません。
ただ、体質や環境によっては、耳垢が詰まって耳のきこえが悪化することがあります。そういった場合には、外耳炎や外耳道真珠腫といった病気を起こしている場合もありますので、一度ご相談ください。
受診の際、耳掃除のアドバイスもいたします。

ご予約専用番号050-5433-1208 WEBでの順番予約  お問い合わせ専用番号 072-990-3387 日帰り手術相談受付
一番上に戻る
WEB順番予約 日帰り手術相談受付
一番上に戻る